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ヴェスパー

小説『007 カジノ・ロワイヤル』で
イアン・フレミングが考案したマティーニの一種。

名称は、小説家イアン・フレミングのジェームズ・ボンド連作小説中、第一作目の『007 カジノ・ロワイヤル』(1953年)に由来し、ジェイムズ・ボンドの恋人役(ボンドガール)として登場するヴェスパー・リンドの名前から付けられた。
一般的なマティーニは、ジンとベルモットに氷を入れてバースプーンでステアし、オリーブの実を添え、場合によってはレモンを飾るが、原作中のヴェスパーは、イギリス産ゴードンズのジンと、ロシア産(またはポーランド産)ウォッカの両方を入れ、ベルモットの代わりにフランス南西部ボルドー産アペリティフワインのキナ・リレを、またオリーブの実の代わりにレモンの皮を入れるのが特徴。
原作でボンドはレシピを細かく指定して注文したあと、フェリックス・ライターが、ジャガイモから作ったウォッカを用いるよりも、穀物のウォッカを使った方がおいしくなり、またロシア産、あるいはポーランド産ウォッカがよいとボンドに提言した。
なお、現在キナ・リレは製造されておらず、通常は代わりにリレ社 (fr:Lillet) の後継銘柄、リレ・ブランを用いる。日本国内ではサントリーがリレ・ブランを代理販売している(2005年に取り扱い中止)。
小説や映画で人気が出たため、現在ではマティーニの定番の一つとなっているが、ボンドはこれ以外にさまざまなマティーニを注文しているため、ヴェスパーのみが「ボンド・マティーニ」というわけではない。たとえばボンドの有名な台詞(せりふ) "Vodka Martini. Shaken, not stirred". (「ウォッカ・マティーニを。ステアせずにシェィクで」)は、ヴェスパーとは別物を指す。2006年に公開された映画『007 カジノ・ロワイヤル』の人気でリレ・ブランに注文が殺到して品薄となり、入手が困難となっているという話もささやかれている。
作家の東理夫、によれば、「いいバーで作ってもらうと、確かにうまい」と賞賛、「シェイクすると口当たりがソフトで洗練された味になる」と評価し、英米仏とソ連が対立する冷戦時代に、もしかしたら原作の小説家フレミングが「世界平和の願いをこめ」て発案したのかもしれない、と推理している。

原作『007 カジノ・ロワイヤル』では、ゴードンズのジンを三オンス、ウォッカを一オンス、キナ・リレ半オンスに氷を加え、単に混ぜるだけではなく、氷で冷たくなるまでよくシェイクし、大きめに薄く削いだレモンの皮を入れる。
一般的な作り方は上述したように、キナ・リレの代わりにリレ・ブランを用いてシェイクし、深めのシャンパングラスに注ぎ、ラセン状に剥(む)いたレモンの皮を入れる。
リレ・ブランを製造するリレ社は、従業員七名という小さな会社である(2006年12月現在)ため、出荷量に限度があり、入手できない場合はベルモットで代用せざるを得ないが、当然、味わいは異なる。また、キナ・リレを用いたヴェスパーの苦みを再現する試みとして、リレ・ブランを用いてキニーネ粉末を加えるレシピもある。



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